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弊社のホテル・旅館総合情報システム「ストーリーホテル・ストーリー旅館」を活用されているオーナー様のインタビューをご紹介いたします。
最終回 おとぎの宿米屋 女将 有馬みゆき様
おとぎの宿米屋様HP
ストーリーホテル・ストーリー旅館を日常使われていて、感じる事についてお聞かせ下さい。また現状についてお話し下さい。
女将 :
以前使っていたシステムとの比較しか出来ませんが、顧客管理という部分は非常に良くなったと感じます。リピーターさんが非常に多いので、その都度その都度どの時期にいらして、どういうお食事を召し上がって、どういう好きなもの嫌いなものがあって、そういったものまで全部入れておけるようになりました。あと日にちもちゃんと確認出来ますし、お名前、電話番号でいついらっしゃったかがすぐ出ますね?そういった部分では非常に使い易くなりました。あとは、会議などの時の資料についてもある程度の分析が出来るようになりましたので、そう意味では非常に若いスタッフ達にとってもプラスになっているのではないかなぁ、と思います。
質問 :
顧客管理という部分で御社独自の使い方はありますか?
女将 :
毎朝ミーティングがあり、そこで、毎朝リピーターさんに関しての情報はきちんと出すようにしております。それを板場と接客さんとフロントでちゃんと持っていまして、時と場合によっては2階のお部屋のセッティングをするところまで、「このお客様はおタバコが嫌い」、「御浴衣が大きいものじゃないとダメ」といったものまでもちゃんと入れているので、それを2階のクリーンサービス部にも渡してきちんと揃えてもらうといった事に使っています。
質問 :
リピーターでない、初めてご利用されるお客様に関してはどのように情報を拾われるのでしょうか?
女将 :
お電話での予約の場合には、必ずお客様とコミュニケーションをとるようにしています。今回のご予約・ご宿泊が大切な日であった場合は、やはりアニバーサリーであるということで、そうなると相手がどのような方なのかという事を知ることができますよね。それに応じて我々の待っているポジションも「今回は大切な結婚記念日であるから、ちょっとしたプレゼントをしましょう」とか、であれば「記念になるようなお花はいかがですか?」とか、「ケーキはいかがですか?」とかそういう思い出作りにちょっと我々が力を貸せるのであれば…という様なご案内が出来るのです。それをスタッフはパソコンを開きながら入力をしていくので、あれはやっぱりいいですよね。電話番号や住所を聞いただけでお客様の情報が出てきますので、お客様と顔が見えなくても確認をしながら判り非常に役に立っております。
質問 :
予約の段階から既にお客様を大事に出来るということですね?
女将 :
お電話いただいた時点で、泊まる・泊まらないは別として、期待をしてお電話して頂くわけですからね…。
じゃらんnetで東北エリアの泊まって良かった(総合)宿ランキングで上位に選出されていますが、web予約への戦略についてお聞かせ下さい。
女将 :
今そういうポジションにいるという事をすごく有難いと思います。こういう時代が来る前は、旅行業者さん中心に自分達の足で営業に出向いて、そしてこんな全く知らない場所に建っている一軒宿ですから、「そんなところに何でお客を送れるの」という苦しい時代がありました。そこへ「じゃらん」というものが出来て、いち早く取り入れました。お客様は新しいもの好きでしょ?そうすると、ホームページって一体どういうものだろうというのを見て、自分はどういうエリアに行きたい?どんなことをしたい?誰と行きたい?というのを自分で選んで、お宿もそれに匹敵する処を選ぶのですよね。画面上で旅行を簡単に構想するのです。自分で探すのは良い事なのですが、色んな情報がこれだけあると、その情報が詰まっている「じゃらん」という選択はプラスでした。こんな上に上がる前は、入ってきた予約の1件1件がとても嬉しくてね、とにかく来て頂いているお客様ですから、誰一人不都合無く喜んで帰って頂く様にと、あとは自社努力ですね。結局web云々の問題では無かったのです。まずwebの事だけが頭にあると、簡単に入る、来て頂けるとなってしまいがちです。それよりも来て頂いた事への感謝ということで、かなり力は入れたと思います。webで入ってもらえるチャンスを作ろう、企画を作ろうではなく来て頂いた方へのおもてなしを中心にやった事で、この結果を得たのだと思います。
質問 :
戦略的では無かったのですね?
女将 :
戦略というより必死でした。webは誰でも入って来やすくなるでしょ?いろんなお客様に来て頂くのは勿論良いのですが、その中でも「こういう処を探して、こういう処に来たかったのよ」というお客様にお越し頂きたいです。ですから、お越し頂いた方に誠心誠意対応した結果が結局web上ではヒットして、それが口コミで広がったという結果に繋がったのではないかなぁ、と思います。
それと、「じゃらん」の方法がマッチしたのだと思います。雑誌とwebでどっちでも攻めてきたでしょ?やっぱり人間って私たちの世代になると、画面だけ見て決めるのって苦しくなってくるのですよ。そうすると雑誌を買ってきて、自分で考えながら見て、読んで、「じゃあここを検索してみましょうか」、「あぁよさそうね」というのであれば、これは予約に繋がる、そう思うのです。
質問 :
画面だけで直ぐに構想するのでは無く、ちょっと時間をかけて考えながら構想を練るのですね?
女将 :
私はそういう世代だから、それを両方残しておいたっていうことで、それも良かったのかなぁ、後からすれば。
今後御社の運営および戦略に、システムをどのように活かしていくことをお考えでしょうか?
女将 :
大変経費のかかるものですから…。こういうご時勢ですし、なるべく経費は企業としては抑えていきたい。そういった中でどれだけ集客出来るかという事になると、広く多くの方に見て頂いて、その中で選んで頂くわけですから…、システムは大事だと思います。勿論、分析は大事ですが、一番大事なのはそれを見てお越し頂いた方にちゃんとお返しできるような形でね、やっていきたいと思います。経費はかければかけるだけ良くなるかというと、そうでは無いと思いますよ。経費をかけたからという驕りがあると、今度は一番大事なところを見失ってしまうような、そんな気がするのです。あれもやっている、これもやっている、なのに何で入らないのだろう?となってしまうので、そうではなくて与えられている経費の中でそれなりのシステムというものを選んで、そのシステムの中でいかにお客様が来て頂ける様な事を考えていくかというのも、大事なことではないかなぁ、と思います。
質問 :
システムはある程度人間の手を省略することができるかもしれないけど、最終的におもてなしをするのは人間なのですね。
女将 :
あまりシステムが良すぎると、若い子たちは安易にそれを活用出来ますので、そうすると数字も何も解からなくなってしまう。計算も出来なくなってしまう。昔は、一泊二食いくらですよね、それにビール飲んで頂きました、お酒飲んで頂きました、追加料理出して頂きました、それで計算していく。「このお客様こんなに使ってもらった!」と感謝しますよね。それに消費税、昔は特消税というのもありましたので、そのパーセンテージすらも出せなかったからね。このシステムが都合良くなった時には、自分で計算が出来なくなってしまったのです。あまりシステムを重要視し過ぎてしまうと、頭を使わなくなってしまうのです。頭を使っているのだろうけど心が無くなってしまう、そういうデメリットもあるので、その辺りを私は気をつけたいなぁとは思います。
須賀川という地で「宿」をはじめた経緯についてお聞かせ下さい。
女将 :
どう考えても須賀川は通過点ですよね。何故って?簡単に言えば、ここに広大な土地があったからですよ。先代社長がね、ここに土地をお持ちになっておりましたので、それでずっとサービス業をやっていたのですけれども、やはりこういうホテル旅館業っていうのは、サービス業でも頂点だっていう、その頂点であるっていう仕事に挑戦したいっていうのがきっかけだったのですね。それは出来るかどうか判らない中の無謀な事でしたけれども…。ただこの地には、那須火山帯の湯脈が通っているということで、尚且つここに土地を所有していたので掘ってみようと。それでやってみましたところ、非常にいいお湯が大量に出てきましたのでね、これはいいと。であればやはり我々がやりたいと思っているこの旅館っていうサービス業を創めてみましょう、ということで安易にもここに建ててしまったのです。
質問 :
そこから今に至ってはリピーターさんで毎回利用されている方もいらっしゃいますよね?
女将 :
半端じゃないよ、この努力は。一言では言えないくらい大変でしたよ。誰が来ますか、こんな処に。高速だって降りないよ。須賀川には牡丹園という名所があります。昔は観光で20万人来ていたのですが、それが今では7万人になっているのですよ。
質問 :
半減どころでなく1/3ですね。
女将 :
そう、だから須賀川の牡丹園だけではお客様を引っ張れないのです。昔、バスで牡丹園へお越しになる方を私は自分の足で直接行って、バスの運転手さんにね、「うちでこういうのをやっておりますから今度回って下さい」という営業をしておりました。そういった事もしましたし、福島空港の前に待ち伏せをして、降りてくるお客様に「うちはこういうとこにありますから是非いらして下さい」というような営業もしました。あとは昔の支配人なんかは高速道路の降り口で警察官に怒られながら「こういうところがありますんで寄って下さい、日帰りも出来ますよ」という時代もありました。そういう時代を経て今があるのですが、全くその時代とは違う経営の仕方なのですよ。そのようないろんな方に来ていただいた時代があり、でもうちは、本当にうちに来たいという方だけにお越し頂きたいなぁ、と。何度も何度もお越しいただけるように頑張りたいなと、そう思っておりました。で、変わっていくっていうことは、ずっと変わらないでねっていうお客様の言葉ね、「米屋さんいつまでも変わらないでね」ってよく言われます。それはオープンした時から言われていたのですよ。「変わらないで頑張って下さい」と。経営している者たちは変わりませんが、時代はめまぐるしく変わりますよね。時代と共に経営方針も変えていかなくてはなりません。
10歳でお越し頂いたお子さんが10年後に20歳ですよね。20歳になっても10歳の時に得た感動がそのまま感じられなければ「変わらないね」ということにならないのですよ。と、いうことは、時代を経て変わっているわけですよね。その時その時のお客様の思いとか、要望に、世界情勢全てひっくるめてそれを上手に取り入れて変わっていかなければやっていけないのですよね。その「変わる」ということが大変なのです。
質問 :
その「変わる」ということの見極めは必要ですよね。
女将 :
それが何故出来たか。それは、老舗旅館では無かったからだと思います。昔々から代々受け継いで、しっかりとした基盤があって、それでやっていくというのを変えるのは非常に難しいと思うのです。
質問 :
伝統でしょうか?
女将 :
そうですね、でも私共には全くそういったものがありませんでしたから…。新参者ですので、本当に旅館業なんてやっていない者がいきなり始めた旅館です。そうなると旅館を使う一般の方の立場から「旅館ってこういうとこが不思議ね、違うよね」というのが多く見えたのです。それを排除しようとして始まったのがこの米屋ですから。だからある意味すごく気楽な立場であったが為に今のような姿が出来上がったのでは無いかと思います。
今までは新参者だったから、縛られるものが無いというのがあったかもしれませんが、これからは「米屋」という基盤ができました。今後の課題は何でしょうか。
女将 :
ある程度基盤が出来てきましたので、だから今どう転ぶかというのは我々自社努力だと思うのです。ここで何か気を抜いてしまったり隙間を作ってしまったりすると、直にお客様には伝わってしまいますから、栄えきれなくなってしまうのではないかなと思います。「これからも変わり続けていく」というのが今後のスローガンになっていくのではないかと思います。大事なことだと思う。変わっちゃいけないけど、変わっていかなければいけないっていう、微妙なその線。難しいねぇ、経営する方はもっと難しいですよ。財産はいつまでも無いからね。そんなもの当てにしてもしょうがないからね。自分たちでこの中でやり抜くっていうのはね、とっても大変なことだよね。
質問 :
変わっていきながらも目指すところはサービス業の頂点というのは変わらないのでしょうか?
女将 :
ナンバーワンにはなろうと思っていないのです。そういう気持ちではないのです。だって施設だってとてもとてもかなうものではないし…。だから、故郷にしたい宿一番になりたいね、逆にね。なんか「帰りたいなぁ」と思って頂ける宿になりたいです。別に煌びやかな、「全国日本一番のお宿です」と言うには全然及びませんから。そうではなく、「また帰りたくなるな、この宿に」と言うような評価を頂いた方が、私には合っているかなという気はします。
質問 :
ナンバーワンというのも、どこにナンバーワンを置くのかが難しいと思いますが、明確に目標があるのでしょうか。
女将 :
ここしかない宿づくりを目指したいです。リピーターさんの数というのも非常に重要だと思いますが、リピーターさんというのもいつどこでどうなるかというのは、これはもう判らないですよ。逆に、そのリピーターさん達には色んな所に行ってもらいたいですよね。色んな所で経験してもらいたいのです。様々な経験をした結果、また何年か後にもし戻ってきて頂けるなら、それはやっぱり本物かなぁという気はします。
質問 :
他も見て、やっぱり米屋さんがいいよって?
女将 :
そう、それがやっぱり自分がおうちに帰ってくる、自宅って飽きないでしょ?どんなに古くなっても飽きないよね?なぜ?なぜなら親がいるでしょ?その親に我々がならなきゃいけないじゃないですか。「おかえり」って待っている側に私たちがならなきゃいけない。スタッフだって年老いて、あとは結婚して辞める者だっていますよ。順繰り人は変わりますよね。変わってもやっぱりここで根強く持っているものは、「おかえりなさい」という気持ちだから、それが変わらなければいつまでもお客様にも愛してもらえるのではないかなと思います。 「米屋」はお客様にとって「これからの別荘」を目指したいです。
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